うつろひたる菊。 蜻蛉日記「うつろひたる菊」現代語訳

蜻蛉日記【あらすじ・現代語訳・簡単な要約・読書感想文・解説】

うつろひたる菊

移菊(うつろいぎく)とは晩秋のころ白菊が花弁の端から紫がかって来たものを言う。 有体に言ってしまえば、花弁にが触れるなどして植物組織が損傷を受け色が変わったもので、園芸用語で言う「霜焼け」に過ぎない。 しかし、平安貴族の紫への愛着から、ともすれば通常の白菊よりも美しいとさえされた。 原産地ので菊は晩秋の野に凛と立つ姿と清清しい芳香から四君子の一つとされ、「不正を寄せ付けぬ高潔さ」「不遇の際も変わらぬ友情」「長寿をもたらすの霊薬」などとのイメージで愛された。 ところが、日本に渡ってからのように儚げなイメージをもたれるようになった。 平安朝の貴族は、盛りを過ぎかけた白菊がほのかに紫がかった風情をことさら優美なものとして愛好し、「一年に二度の盛りを迎える花」「冬枯れの直前まで美しく咲く花」と愛でた。 通常「うつろひたる花」は萎れてみすぼらしくなった花を示すが、「うつろひたる菊」に関しては美しいものとして別格に扱う。 重ねのにも採用されており、表は中紫、裏は青あるいは、表は紫で、裏が白。 (山科流) にも「うつろひたる菊」などという呼び方で登場し、鑑賞するほかにや手紙の付け枝として利用されていたことがわかる。 秋をおきて時こそ有りけれ菊の花うつろふからに色のまされば(「」)「秋を過ぎてこそ菊は盛りだ。 うちしおれていくほどに色の美しさが勝るのだから。 」 紫にやしほ染めたる菊の花うつろふ色と誰かいひけむ(「」)「紫に何度も染めたような美しい菊の花をうつろう色(通常は植物に「うつろう」は色褪せていく様子)だなどと誰が言ったのだろう」.

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蜻蛉日記「うつろひたる菊」現代語訳

うつろひたる菊

====== さて九月ばかりになりて、出でにたるほどに、箱のあるを手まさぐりにあけて見れば、人のもとにやらむとしける文あり。 あさましさに、見てけりとだに知られむと思ひて、書きつく。 うたがはしほかにわたせる文見れば ここやとだえにならむとすらむ など思ふほどに、うべなう、十月つごもりがたに、三夜しきりて見えぬ時あり。 つれなうて、「しばし試みるほどに」など気色あり。 これより夕さりつかた、「うちのかるまじかりけり」とて出づるに、心得で、人をつけて見すれば、「町の小路なるそこそこになむとまり給ひぬる」とて来たり。 さればよと、いみじう心憂しと思へども、言はむやうも知らであるほどに、二三日ばかりありてあかつきがたに門をたたく時あり。 さなめりと思ふに、憂くてあけさせねば、例の家とおぼしきところにものしたり。 つとめて、なほもあらじと思ひて、 歎きつつひとり寝る夜のあくる間は いかに久しきものとかは知る と、例よりも引きつくろひて書きて、うつろひたる菊にさしたり。 返りごと、「明くるまでも試みむとしつれど、とみなる召使の来あひたりつればなむ。 いとことわりなりつるは。 げにやげに冬の夜ならぬ真木の戸も おそくあくるはわびしかりけり」 さても、いとあやしかりつるほどにことなしびたる。 しばしは忍びたるさまに、「内裏に」など言ひつつぞあるべきを、いとどしう心づきなく思ふことぞ限りなきや。 ====== 蜻蛉日記の「うつろひたる菊」の本文は、ふつうこの部分をいいますが、これでよろしい?.

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『蜻蛉日記』「うつろひたる菊」の現代語訳と重要な品詞の解説2

うつろひたる菊

これより、夕さりつ方、「内裏に のがるまじかりけり 【注1】。 」とて 出づる 【注2】に、 心得で 【注3】、人をつけて 見すれ 【注4】ば、「町小路 なる 【注5】そこそこになむ、 とまり給ひぬる 【注6】。 」とて 来たり 【注7】。 さればよ 【注8】と、 いみじう 【注9】 心憂し 【注10】と思へども、 言はむ 【注11】やうも 知らで 【注12】あるほどに、二、三日ばかりありて、暁方に、門をたたくときあり。 さ 【注13】 なめり 【注14】と思ふに、 憂く 【注15】て、 開けさせね 【注16】ば、 例の 【注17】家と おぼしき 【注18】所に ものしたり 【注19】。 重要な品詞と語句の解説 語句【注】 品詞と意味 1 のがるまじかりけり ラ行下二段動詞「のがる」の終止形+不可能推量の助動詞「まじ」の連用形+詠嘆の助動詞「けり」の終止形。 意味は「逃れることができないのだよ」。 2 出づる ダ行下二段動詞「出づ」の連体形。 3 心得で ア行下二段動詞「心得(こころう)」の未然形+打消の接続助詞「で」。 意味は「納得いかないで」。 4 見すれ サ行下二段動詞「見す」の已然形。 意味は「見せる」。 5 なる 存在の助動詞「なり」の連体形。 意味は「~にある」。 6 とまり給ひぬる ラ行四段動詞「とまる」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連用形+完了の助動詞「ぬ」の連体形。 意味は「お停まりなさった」。 「給ひ」は尊敬語で、 兼家に対する敬意。 7 来たり カ変動詞「来(く)」の連用形+完了の助動詞「たり」の終止形。 意味は「来た」。 8 さればよ 連語。 意味は「思ったとおりだ・案の定だ」。 9 いみじう シク活用の形容詞「いみじ」の連用形。 意味は「たいそう」。 「いみじ う」は「いみじ く」がウ音便化している。 10 心憂し ク活用の形容詞「心憂し」の終止形。 意味は「つらい」。 11 言はむ ハ行四段動詞「言ふ」の未然形+婉曲の助動詞「む」の連体形。 意味は「言うような」。 「む(ん)」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 12 知らで ラ行四段動詞「知る」の未然形+。 打消の接続助詞「で」。 意味は「知らないで」。 13 さ 副詞。 意味は「そう・そのように」。 14 なめり 断定の助動詞「なり」の連体形+推定の助動詞「めり」の終止形。 意味は「~であるようだ」。 「なめり」は、「なるめり」が「なんめり」が撥音便化して、「なめり」と表記したもの。 15 憂く ク活用の形容詞「憂し」の連用形。 意味は「つらい」。 16 開けさせね カ行下二段動詞「開く」の未然形+使役の助動詞「さす」の未然形+打消の助動詞「ず」の已然形。 意味は「開けさせない」。 17 例の 連語。 意味は「いつもの」。 18 おぼしき シク活用の形容詞「おぼし」の連体形。 意味は「思われる」。 19 ものしたり サ変動詞「ものす」の連用形+完了の助動詞「たり」の終止形。 意味は「行ってしまった」。 ここ(私の所)から、夕方に(夫・兼家が)「宮中に(用事があって)逃れることができないだよ。 」と言って、出て行った時に、納得いかないので、人を付けて観察させたところ、「町小路にあるどこそこという所に、車をお停めなさった。 」と(報告して)来た。 「思ったとおりだ。 」と(思い)、たいへんつらいと思ったけれど、(夫に文句を)伝えるようなすべを知らないでいるうちに、二、三日ぐらいたった、夜明け前ごろに、家の門を叩く時があった。 そうであるようだ(夫が帰ってきたようだ)と思って、つらくて、門を開けさせないでいたところ、いつもの家と思われる所に行ってしまった。 いかがでしたでしょうか。 この箇所で特に重要な文法事項は次の通りです。

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